「自分の人生は、なんて恵まれてないんだろう。」
そんな風に悩んでいたら。
ぜひ読んでほしいのがこの『戦場から女優へ』という本です。
これは、バラエティ番組などでみかける、イラン人のタレント、サヘル・ローズさんの半生記をつづった本。サヘルさんといえば、あのきれいな日本語を話す、中東美女。お顔も美しいですが、それ以上に話し方や受け答えがある意味、純粋な日本人より美しいのが印象的ですよね。
この本には、豊かすぎる現代の日本からは想像しがたい、次元が違う苦難の彼女の半生記が記されているんです。この本を読んだら、いかに自分が今抱えている問題がちっぽけなものか、いかに自分が恵まれているか、を実感するはずです・・。
だって、サヘルさんは、あり得ないほどの『恵まれない』逆境がふりかかりながらも生き抜いているんです。
ざっといくつかあげてみると、
- 生まれたのは、イラン・イラク戦争(1980年~1988年)のさなか
- イラクの国境近くのイランで、極貧の大家族の11人兄弟の末っ子として、先天性の心臓病を抱えて生まれる
- 5才のとき、戦禍で家族全員を失い、天涯孤独に
- 孤児院で育てられている中で、養母に引き取られるものの
- サヘルさんを養子にしたことで、裕福な実家から養母は勘当され、極貧の生活を余儀なくされる
- その後、養母のフィアンセを頼って渡った日本では、フィアンセに見捨てられ
- 公園でホームレスとして過ごし
- ホームレスから脱却後も、日々の食べるものにも苦労する極貧生活はつづき
- 学生時代は陰湿ないじめに
これだけの辛さが次々に起こったら、このどこかで生きる勇気さえ失うでしょう。
豊かな日本に生まれ育ったわたしたちには考えられないような、壮絶な日々。実際、サヘルさんも、物心がつくころになってくると、自らの命を絶とうとしたこともあったようです。それでも生きぬいて、今に至っています。
この本を読んで、色んなことを考えさせられました。
先日、フランスでのテロやトルコでのクーデターが起こり、平和とはかけ離れた出来事のなかで犠牲となった人たちがたくさんいて、それは遠い異国での惨事なんだけれど、サヘルさんの幼少期とオーバーラップしてきて、とても身近なものもとして心に重く残ります。
それから、彼女を孤児院から引き取った、サヘルさんの養母の強さや潔さも心に残りました。未婚でありながら孤児のサヘルさんを引き取り、裕福な実家からも勘当され、フィアンセからも見捨てられても、貧乏のどん底で暮しながらもサヘルさんを手放すことなく育てあげたお母さんの生きざまに、血のつながりだけでは決して測れない、母の愛の深さや強さを見せつけられた思いがしましたね・・・。
とにかく、この本は彼女のあの美しい語り口がそのまま文章になったような、すーっと読み切れる本。機会があればぜひ、読んでみてくださいね!